会計士ブログ② 簿記の歴史

こんにちは。現役会計士のryojitanです。本日は簿記の歴史について気ままに書いていこうと思います。

 

皆さんは簿記と聞いて何をイメージされますでしょうか??はじめて聞かれた方もいるかもしれません。鋭い方は単語からなんとなくイメージできるかもしれませんが、簿記とは帳簿に日々のお金に関わる活動を記録することになります。どれくらいの売上があったか、どれくらい支払ったか、どれくらい現金を保有しているか、それら活動の記録を総称して簿記といいます。

 

では、この簿記とはいつの時代から使われていたのでしょうか。お金が存在すればどれだけ残っているかを把握する必要があります。時代は遡り4000年前の古代のバビロニア、そこで記されたハンムラビ法典に簿記に関わる記載があるようです。文明社会が築かれてからはなくてはならない存在だったのでしょう。そして簿記には単式簿記複式簿記の2種類があります。

単式簿記とは、1つの勘定科目で取引を記録していく帳簿のつけ方をいいます。家計簿を想像してもらえるとわかりやすいかもしれません。1月はお年玉を現金1万円貰い、ゲームの購入に2千円を現金で払い、食事代として3千円現金で支払いました。その結果、現金は手元に5千円残ります。こちらが単式簿記、1つの勘定科目である現金を基準として取引を記録していきます。シンプルでわかりやすい利点はあるものの単式簿記はそのシンプルであるがゆえに、取引が高度化すると対応ができなくなり、時は15世紀、新たに複式簿記が生まれます。

複式簿記とは、どのような取引(種類)で、その取引の後に何が残ったか(結果)の仕訳とよばれる2つの事象を同時に記録します。この複式簿記のルーツは15世紀のイタリアに遡り、これが人類史上最高の発明の1つとまで言われ、当時の商取引に非常に大きな影響を与えていきます。何がそれほどまでに画期的だったのか、それは単式簿記ではどんぶり勘定で不透明であった儲けを要因ごとに管理することができるようになったことです。例えば、現金、売上、仕入の3勘定を思い浮かべてみましょう。単式簿記ではあくまで現金がどれだけ残っているかを把握する事が目的であるため、取引件数が多くなるほど売上、仕入を正確に把握することができなくなり、売上の伸びによる儲けなのか、はたまたコストを抑えたことによる儲けなのか、要因分析ができませんでした。また、為替取引や掛取引といった現金で即座に決済されない取引には、1つの勘定科目(現金)で管理する単式簿記は対応ができなくなってしまいます。そこで現れたのが複式簿記。結果だけでなく種類(取引フロー)も同時に記録する事で売上・仕入れの管理を可能とし、現金以外の為替取引にも対応することが可能です。15世紀のイタリアは東方貿易で需要が高まっていた香辛料や宝石、絹織物をヨーロッパに運んでおり、取引の規模、そして銀行のネットワーク拡大にこの複式簿記がとても大きな役割を果たすのです。

需要が高まっているならば取引規模を拡大したいものの、それには多額の元手が必要になります。この多額の元手になる原資はどうやら銀行の金庫に大事に保管されていましたが、銀行としても経営状況が不透明な会社には焦げ付きを恐れ、大判振る舞いして多額に貸すわけにもいきません。そこで複式簿記による管理が大いに役立ちました。会社がどのような要因で儲けがでたのかわかれば、銀行にも堂々と経営状況を報告することができます。経営状況を確認した銀行は、商売が軌道にのっているとわかれば融資を行うことができます。そして東方の商品の需要が高まるこの時代、銀行はイタリアだけでなく近隣諸国の旺盛な資金や為替取引のニーズを嗅ぎつけ、ネットワークを拡大したいと考えます。いわば近隣に支店を開設し経営管理することについても、複式簿記は役立ちました。経営状況を管理し、それを銀行(外部)に報告することが可能となった、現在でも企業活動を行う上での基礎が500年前のイタリアで築かれたようです。

 

そしてこの複式簿記の誕生から、現在に至るまで多くの会計手法が生み出され行くことになります。